新築住宅、特に戸建て住宅の購入にあたり、自己資金はどのくらいの金額を用意すべきでしょうか。
「自己資金」とは「頭金」のことを意味します。ちなみに自己資金に対して、銀行などから融資を受けて調達する資金のことを「他人資本」と呼びます。
この記事では自己資金をどの程度準備すると安全なのか、解説していきます。
自己資金0円で家を購入するケースが多い
結論から言うと、2010年代初頭から2025年現在にかけて、自己資金無しで住宅を購入する家庭が非常に多いのが現状です。
これまで当社に相談を寄せた約5,000世帯のうち、自己資金として100万円以上の現金を用意したのは1割程度にとどまります。圧倒的多数は、銀行融資によるフルローンでの購入です。
しかし誤解しないように言うと、自己資金を入れなかった9割のうち、預貯金が100万円を下回る世帯は1軒もありませんでした。住宅購入時の平均年齢は34歳で、預貯金額の平均金額は720万円です。

預貯金はあるが、自己資金として入れなかった
というケースが多いのです。
これはいったいなぜでしょうか。
自己資金を入れなかった理由
その理由は主に3つあります。
住宅ローン減税
2025年現在、住宅ローンを借りて家を買うと、所得税と住民税の減税が受けられます。
内容の詳しい説明は、国税庁のホームページを参照していただくとして、ざっくりというと、
年末のローン残高×0.7%
に相当する金額の所得税と住民税が毎年減税される、という制度です。
ポイントは、年末のローン残高が母数であるということです。自己資金を多く入れすぎると当然残高が減り、受けられる減税額も減ります。
だから自己資金を入れない、となるわけです。
しかし住宅ローンを借りると金利がかかります。自己資金を入れた場合と、減税を多く受けた場合とを緻密に計算し比較してみると、減税を受けた方が得であるケースはほとんどありません。
金利が上昇したり、子供が増えて扶養家族が増えたりしたら、減税を優先するメリットは皆無になります。
返済期間の長期化と、がん団信の存在
特に平均年収が低い地方都市では、返済期間40年の住宅ローンが主流になっています。
33歳から返済を始めたとすると、73歳で完済する計算です。40歳ならば80歳です。
一方で、住宅ローンにガン保障がついているケースが増えてきました。通称「がん保証付き住宅ローン」「がん団信」というものです。
がんと診断されたら住宅ローンの残高が0円になるというローン商品です。日本人は65歳以降、1/2の人が、がんを患うとされています。特にリタイア後は高確率で住宅ローンの支払いが免除されるかもしれないということを意味します。
がん団信があるので、自己資金を入れず、返済期間も長くしよう
そのように判断する人が増えているのです。
がん団信は一般的に0.1%の金利上乗せとなります。0.1%分はいわゆる保険のかけ金に相当するのですが、一般的ながん保険のかけ金よりもはるかに安く保障が大きいため、住宅ローン=がん保険、と考えることができます。
自己資金を入れなければその分「がん保険の保障も大きい」ということになるのです。
変動金利のリスク回避のため
2025年現在、圧倒的多数の人が変動金利型の住宅ローンを借りています。
長年変動金利は下降を続けていて、上昇する局面が全くありませんでした。しかし日銀の利上げを受けて変動金利も上昇を開始。2%くらいの金利は想定内としたほうが良さそうな状況です。
変動金利が上昇したときに、一般家庭が取れるリスク回避策は、一部繰り上げ返済です。
繰り上げ返済をすることによって、元金が減るため、毎月の返済額を減らしたり返済期間を短くしたりできます。
金利が低いうちは自己資金を入れずにフルローンで借りる。
金利が上昇したら、預貯金を使って繰り上げ返済をしリスク回避をする。
このように考える人が多いようです。手持ちの預貯金は自己資金として入れず、上記のように減税などを享受しつつ、金利が上昇したら繰り上げ返済のために出動させるというわけです。
しかし、支払う金利と受け取る減税額を比較すると、ほとんど意味がないことが分かります。最初から自己資金を入れるほうがメリットが大きいでしょう。
自己資金を入れないデメリット
自己資金を入れない場合のデメリットは明確です。
住宅ローンの借換えができなくなる
この点に尽きます。
新築時の諸費用までも含めて住宅ローンを借りていると、借り換える時に「担保不足」となりやすいのです。
担保不足とは、融資金額よりも担保に入れる自宅の価値が低くなることです。
本来の家の価値に含まれない、不動産取得税、登録免許税、仲介手数料、住宅ローン関連費用(保証料、事務手数料、団体信用生命保険料など)、保険料(火災保険、地震保険など)、登記費用(司法書士報酬など)をローンに含めたことが原因です。
特に金利が安いネット系銀行は担保額を重視して融資審査をします。担保不足によって、借り換えができなかった人が最近増えています。
借換えをする場合には、担保が不足する分を繰上げ返済することが必要です。
自己資金を投資に回すのは絶対NG
昨今、「家を買うとき、自己資金は入れずに投資に回した方がいい」と言う人がSNSなどで目立ちます。
その人たちはFPを自称していますが、多くは金融商品(保険や証券、投資用ワンルームマンションなど)の営業マンです。
これは絶対にやめてください。金融商品を買い自己資金を投資に回してしまうと、いざというときに損失を承知で解約・売却することになりかねません。繰り上げ返済が必要な瞬間は突然やってきます。そのときに運用がうまくいっているとは限らないのです。
投資は、繰り上げ返済や教育費、自動車購入費など十分な現預金の他にある、ゆとり資金で行ってください。
自己資金をどのくらい入れるかは専門家に相談してください
子供の進学などを控えていると、預貯金から自己資金をどのくらい出してもいいのか迷うと思います。
長岡FP事務所のライフプラン相談をご利用ください。