【家が売れない】「ママ目線」を売りにすると、とたんに家が売れなくなる理由➡住宅購入はいまも夫が決定権者

売れない工務店に共通する、ある特徴

特に中小規模の工務店のチラシを見ていると、こんな広告コピーを見かけることがあります。

ママが笑顔になる家!
女性設計士が女性目線で作りました!
ママの子育てを考えた間取り!

そのような企業ではInstagramに力を入れていることが多いです。若い女性社員が展示場をはしゃいで案内するストーリーをあげている様子、見たことがある人も多いでしょう。

こんなに収納がひろい!
ママが喜ぶキッチン!
動線も抜群!

そんな感じで若い女性がはしゃぎながら展示場を案内するのです。その動画を閲覧する人を「女性」として想定しているようです。

とても営業努力をしていると思います。とても頑張っていると思います。Instagramのフォロワーも順調に増えています。

しかし残念ながら、それらの工務店は家が思うように売れていません・・・コロナ禍以降に住宅価格が高騰するとさらに商談が減り、資料請求すら少なくなっています。

Instagramの投稿がきっかけで家が売れた経験はゼロ。反応ゼロに社員が頑張っているのです。

2025年現在、家が売れない工務店の特徴はこれです。

  • 女性目線をアピールしすぎている

それがマーケティング的に効果があるのは、輸入住宅などデザインが極端に女性好みである工務店だけです。一般的なデザインの、平均的な住宅を売っている工務店では、女性目線のアピールは売り上げに直接つながっていないはずです。

工務店はきっとこう言うでしょう。

「今どきの家は奥さんが気にいらないと、家が売れないんだ!決定権者は奥さんなんだ!」

本当にそうでしょうか。

大手住宅メーカーでは、女性目線をアピールすることはあって抑制ぎみです。前面に押し出す広告を見ることはありません。これはなぜなのでしょうか。

一条工務店の販売戦略を見てみましょう

一条工務店は、ご存じのとおり、全国に展開している中堅ハウスメーカーです。
大手メーカーほど高額ではないこともあり、近年非常によく売れています。しかし正直なところ、建物のデザインは野暮ったく高級感はいまひとつ。

それなのになぜ一条工務店は全国で売れているのでしょうか。

それは、営業手法が非常に的を得ているからです。

一条工務店のセールスポイントは、「性能スペック」と「ロジック」です。

断熱性能を示すUA値のスペックや、太陽光発電と蓄電池による光熱費節約ロジックが有名ですよね。他にもスペックとロジックが大盛りです。
これを誰にアピールしているでしょうか。

そうです。

男性である夫です。

女性の多くにはこの性能スペックの話は正直なところ響きません。

ここが一条工務店の販売戦略のすごいところなのです。

この日本では、特に地方では、住宅購入の決定権者は夫です。住宅ローンの主たる債務者も夫です。最近は夫婦が共有名義で購入することも増えましたが、それは家の値段が高騰しているからであって、もし夫だけの収入で住宅ローンが借りられるなら、妻は債務者にならないと考えている世帯が多いでしょう。

Z世代ではぺアローン、共有名義は当たり前になっていますが、30歳以上の世代ではまだ決定権者は夫です。

ジェンダーロールによる価値判断がまだ色濃く残っているのが、住宅購入という消費行動なのです。
女性が要望を色々言ったとしても、最終的には夫の意向に従う場面は、筆者も現場でよく見かけます。

「家は夫が買うもの」という意識が女性にもまだまだ根強いのでしょう。

女性はスペックのことよりも、間取りや家事動線、住宅ローンの返済計画や維持費のことが気になります。しかし、夫が「スペック」と「ロジック」にすっかり夢中になってしまい、妻の不安に対してフォーカスされることは多くありません。

男性の住宅営業マンは、夫と妻、どちらの顔を多く見ているでしょうか。売れている営業マンほど、実は夫の顔を見る比率が高いのです。

これは女性もよく気づいていて、差別的な扱いを受けているのかもとモヤモヤしています。だからこそ工務店は「女性目線の家」をアピールしたくなるわけですが、ジェンダーの問題の現実はもっと根深いようです。

住宅購入時のジェンダーロールの影響

2006年と少々古い研究ですが、『女性のライフコースと住宅所有』(家計経済研究所)が参考になります。

この研究は、女性のライフコース(結婚、出産、離婚、老後など)と住宅所有の関係に焦点を当てた研究です。

  • 地方での住宅購入の決定権者は誰か
    研究では、地方と都市部での住宅所有パターンの違いが取り上げられています。地方では伝統的な家族構造が強く残っており、男性が住宅購入の主導権を握る傾向が顕著です。一方、都市部では共働き世帯が増加し、女性が住宅購入の決定に関与するケースがやや増えているものの、依然として男性主導の傾向が強いとされています。

特に地方の工務店において、前述したように「ママ目線」をアピールしても、住宅購入を決断させるほどの決定的な影響は及ぼさないでしょう。

事実、女性に向けたInstagramの投稿はよく見られているものの、具体的な商談にはつながらないと感じている企業が多いようです。

2025年からの住宅販売戦略は

とはいえ、若い世代を中心にジェンダーの意識改革は確実に進んでいます。

女性目線、男性目線という性別に分けたマーケティングに、違和感を覚えるのがZ世代です。

これからの時代はジェンダーロールから解放されていきます。

近い将来、夫が住宅購入における決定権を握ってしまったら、おそらくモラルハラスメントと呼ばれるはずです。
妻も夫と同等の収入を持ち、共有名義で住宅ローンを借りるのが当然の時代になります。

そうなると「ママ目線」という言葉はお寒いし、「男性を意識したスペック訴求」はなんだかキモいということにもなるでしょう。

今後大切なのは、ジェンダーロールに縛られることなく、夫婦が対等に話し合える環境をいかに作っていくかです。

そのひとつがファイナンシャルプランナーによるライフプラン相談です。ジェンダーロールとそこからの解放という現代の価値観に合わせて、ライフプランとマネープランを設計できるファイナンシャルプランナーはまだ多くはありません。

長岡FP事務所のライフプラン相談をぜひご利用ください。