永住権のない外国人の住宅ローン【2025年7月版】➡在留資格でも住宅購入は可能です。SOFAの場合は?

増え続ける在留外国人。

日本社会で定着し、長く暮らしたいと考える時、必ず問題になるのが住宅の取得のことです。在留外国人は住宅ローンを借りられるのでしょうか。

増え続ける外国人観光客

特に東京都内において、外国人を見かけることが多くなったと思う人は多いでしょう。

日本政府観光局(JNTO)によれば、2024年に訪日した外国人観光客は3,687万人でした。コロナ禍直前の2019年は3,188万人だったので、その多さに驚きます。

ちなみに2003年は521万人。21年間で7倍に増えた計算になります。

国別に見ていきます。2025年2月だけを抜き取ってみると、次のようになります。

国別月別訪日客数
韓国847,300人
中国722,700人
台湾507,300人
香港195,500人
USA191,500人
出所:日本政府観光局 (JNTO) 

中国人観光客が多いというイメージを持つ方が多いのですが、最近は韓国人の多さが際立ちます。

在留外国人の数も過去最高に

増えているのは外国人観光客だけではありません。日本に在留する外国人の数も増えています。

出入国在留管理庁の統計によると、令和6年6月末時点で、在留外国人は358万8,956人でした。

在留者の国籍別人数

国籍別に見ると、次のようになります。

国籍人数
中国844,187人
ベトナム600,348人
韓国411,043人
フィリピン332,293人
ブラジル212,325人
出所:出入国在留管理庁(ISA)

在留者の資格別人数

日本に在留するためには、在留資格を取得する必要があります。

(1)永住者902,203人(+10,634人)
(2)技能実習425,714人(+21,158人)
(3)技術・人文知識・国際業務394,295人(+31,949人)
(4)留学368,589人(+27,706人)
(5)家族滞在283,204人(+17,184人)

永住者に似ている資格に「定住者」があります。

定住者は第三国定住難民,日系3世4世,中国残留邦人等を指し、人権上の配慮から日本で定住する資格を得ている人達です。愛知県の工場などに日系ブラジル人の労働者を多く見かけるのは、この定住資格の影響があります。

在留者の中で最も多いのが「永住者」です。

永住者にも二種類あります。

永住者日本に10年以上継続して在留していること

・素行が良好であること
・独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
・その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

日本人の配偶者となった外国人
特別永住者第二次世界大戦の以前から日本に居住して日本国民として暮らしていた外国人で、
サンフランシスコ平和条約により日本国籍を失った人
(韓国あるいは朝鮮、台湾の国籍を持つ人)
※「朝鮮籍」は戦後の国籍登録時に便宜上使われた地域名であり、北朝鮮を示すものではありません。

このうち特別永住者は、他の在留資格者と違い、在留カードを常時携帯する必要はありません。

永住資格は在留外国人にとって目標としたい資格と言われます。永住資格にはメリットが多く、在留資格が無期になる、就労制限がなくなる、など日本に住むうえで自由度が上がるのです。税金や社会保険料の滞納があると永住資格は得られないなど、年々審査が厳しくなっています。

そして永住者にとっての最大のメリットは、「住宅ローンを借りられること」です。

日本に永住するからには住まいの確保が重要になります。日本人と同じく、リタイアした後で家賃の心配をせずに住める家の確保はライフプラン上の課題です。

ほとんどの日本の銀行は、永住者と特別永住者には日本人と全く同じ取扱いで住宅ローンの融資を行っています。

問題は、永住資格のない在留外国人が住宅ローンを借りる場合です。永住資格のない在留外国人が住宅ローンを借りられる可能性のある金融機関を紹介していきます。

在留外国人が住宅ローンを借りられる金融機関

在留外国人が住宅ローンを借りる時、取り扱いのある金融機関には限りがあります。その多くは「永住資格があること」を条件としていますが、一部、「在留カードを持つこと」を条件にしている銀行が存在します。

永住資格よりもハードルが低く、融資を受けられる可能性があります。

永住資格のない外国人が借りられる可能性のある金融機関は以下の通りです。

イオン銀行

銀行としては後発のイオン銀行は、永住権のない外国人向けの住宅ローンを用意しています。

ただし、条件は少し厳しめです。

  • 就労に制限のない在留資格を持っていること
  • 日本語の読み書きができること
  • 自己資金を物件価格の20%以上用意すること
  • 返済期間は最長15年
  • 金利は店頭金利に1%を加える

就労制限がなく、永住権はないが在留資格がある人とは、定住者に限られるということになります。定住者専用ローンといえますが、読み書きや自己資金など、すべての条件をクリアできる人はごく限られるでしょう。

中国銀行(Bank of China)

中国銀行は、北京市に本店を置く中華人民共和国第3の商業銀行です。

こちらは日本に住む中国籍の人への住宅ローンを取り扱っています。

その条件は、

  • 合法な在日居留資格を有する中国籍の人
  • 在日居留資格を有さない中国籍の人は、50%以上の自己資金を用意すること
  • 返済期間は最長15年

中国国籍を持つ、富裕層向けという印象です。

セゾン・ファンデックス

株式会社セゾンファンデックスは、個人・法人向け融資事業及び、不動産金融事業、リースバック事業、信用保証事業等を行う日本の消費者金融業・抵当証券業者です。

外国人向けの金融商品について、豊富なラインナップがあり、住宅ローンも用意されています。銀行が取り扱わない案件に強く、頼りになりそうです。

永住権がなくても融資されるのが特徴です。返済期間は上限が30年と短めですが、金利の変更によって35年まで延長される可能性があります。

ただし融資できる国籍には限りがあるので要注意です。

東京スター銀行

東京スター銀行は外資系金融機関です。親会社は台湾の大手金融グループCTBC Financial Holdingの中核企業であるCTBC Bankです。

こちらでは「スター住宅ローン」という専用商品を用意しています。永住権を問わず、在留カードがあれば融資される可能性があります。

条件は、

  • 日本語(読み・書き)が理解できること
  • 年収は400万円以上
  • 主要都市圏の物件のみ
  • 店舗への来店ができること
  • 返済期間は最長35年
  • 団信もある

このように日本人向けの住宅ローンと遜色ない内容です。大都市圏にお住まいの方に限られますが、検討の余地があるでしょう。

あすか信用組合

あすか信用組合は、東京都新宿区に本店を置く信用組合で、在日韓国人系の商銀信用組合の一つです。

韓国系の金融機関ではありますが、融資先の国籍を限定してません。

条件は、

  • 日本語の読み書きができること(ただし、配偶者か弁護士の助けを借りれば理解できる場合は可)
  • 融資金額は購入金額の80%以下
  • 連帯保証人がいない場合は金利が0.2%上乗せされる
  • 返済期間は最長35年
  • 団信あり、配偶者・親・子との収入合算可能

2025年7月現在、変動金利が2%と若干高いのが難点ですが、入口が広く融資の可能性があります。選択肢に入ります。

ただし、在日韓国人系であることからも店舗がある場所が限定的で、東京都内、大宮、札幌、青森、岩手、秋田、仙台、郡山だけです。店舗の近隣でしか融資されないため、利用できる人は限られるでしょう。

プレスティア(SMBC信託銀行)

プレスティア(PRESTIA)は、SMBC信託銀行が提供する富裕層向けの総合金融サービスです。2015年にシティバンク銀行のリテールバンク事業を統合して立ち上げた新ブランドです。

プレスティアでは「外国人専用」という表記はありませんが、永住権のない在留外国人にも住宅ローンを融資しています。

条件は、

  • 日本語もしくは英語で意思疎通可能であること
  • 各種契約書類は日本語が正文だが、英語訳書類も対応可能
  • 年収は500万円以上
  • 月間平均総取引残高が1,000万円相当額以上かつ月間平均資産運用残高が300万円相当額以上の人は「プレスティアゴールドプレミアム」というステータスになり、金利が優遇される

年収500万円以上という表記からハードルが高くないように感じますが、富裕層向けのサービスであることから、それだけでは融資は不可能と思われます。

意外な落とし穴も

住宅ローンを借りる時、つなぎ融資や元金据え置き返済方式に対応していなければ、注文住宅の購入は実質的に不可能です。購入できるのは、完成済みのマンションや分譲住宅に限られることになります。

上記の銀行がつなぎ融資などに対応できるかどうかは、それぞれにお問合せください。

日米地位協定(SOFA)における米軍関係者の場合

在留が認められていても、住宅ローンが借りられないケースもあります。

それが日米地位協定(SOFA)における米軍関係者です。米軍に属する軍人(陸軍、海軍、空軍、海兵隊など)や軍属は、日米地位協定によって在留カードを持たずに在留できるという優先的な取り決めがなされています。

そのため「在留カードを持たなければ住宅ローンが借りられない」というルールがここで適用され住宅ローンが借りられないのです。

もし米軍関係者が日本で住宅ローンを借りたいときは、

  • 日本人の妻の名義で住宅ローンを借りる
  • SOFAの対象外となったあとで在留資格を取る

このいずれかが必要です。

上陸審査の対象外であるSOFAが適用されていれば、住宅ローンの融資をする金融機関は皆無です。