【40代独身の住宅購入】「おひとりさま」の住宅購入、その注意点をFPが解説➡いつまでその家に住むかを決めることが重要

国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023)改訂版」によると、日本の50歳時の未婚率は、男性28.3%、女性17.8%です。

これはあくまでも一度も結婚したことがない人の割合であって、離婚を経て独身の人も加えると、より多くなります。

年齢問わず、一生独身を貫こうと思っている人にとって、悩みのタネは「住宅問題」です。

老後は自分一人の年金収入しかないため、賃貸物件の家賃を払うのは不可能です。そのため老後の棲家として若いうちに持ち家を購入したいと考える人が増えています。

おひとりさまが持ち家を買う時の注意点をFPが解説していきます。

一人の収入で住宅ローンは借りられる?

住宅ローンを借りる時の銀行の審査は、主に次のような要素で判断されます。

  • 過去の信用情報(借金の返済履歴)
  • 年齢(定年退職まであと何年か)
  • 職業(安定した収入が得られる仕事か)
  • 年収に占める返済金額の割合(返済比率)
  • 土地の担保価値(非線引き区域などでは審査NGになることも)

つまり、借金返済の遅れがなく、若く、安定した職業につき、年収が高く、都市部に家を購入する人は文句なく借りられるでしょう。

この中で、独身者にとってのハードルが「世帯年収」です。

コロナ禍以降、住宅価格が高騰しています。そのため、多くの人は配偶者と収入を合算させて、共同名義で住宅を購入しています。一人だけの収入では十分な額の住宅ローンが借りられないからです。

独身者の場合、1人でも高収入であれば問題ないのですが、平均的な収入であれば借りられる額は低めになります。銀行が借してくれる金額に合わせて物件を選ぶことになりますが、安い家は寿命が短く維持費もかかる傾向があるので、物件の選定には要注意です。

ひとり暮らしに最適な家の広さと間取りは?

限られた予算の中で満足できる物件を探す必要がありますが、ひとり暮らしに最適な家の広さはどのようなものでしょうか。

間取りとしては、リビング、寝室、キッチン、お風呂、トイレ、脱衣所、収納・クローゼットが備わっていれば、1人で生活することは可能です。延床面積18坪~24坪くらいで十分な広さが確保できます。2階建ての場合、土地が30坪程度確保できれば自動車を1台~2台停めることが可能です。

40㎡(12坪)を下回ると、住宅ローン減税の制度が使えなくなるので注意です。

一人暮らしなので平屋がいいと考える人は多いものの、一般的に平屋は2階建てよりも値段が高くなります。土地の広さ、基礎と屋根の大きさが必要になるためです。

ただし2階に寝室を設けると、高齢になってから階段の昇り降りが不安になると、大変危険な状態になります。

また、仏壇を設置する人は、どこに置くかも重要な要素になります。最近は仏壇をリノベーションして小型するサービスの人気があり、場所を取らないようにできます。昔ながらの大型の仏壇を設置するときには、新しい家の間取りを大きく左右するため、設計時の最初の段階で住宅メーカーの担当者に伝えておきましょう。

間取りは人生設計、人生への価値観と密接に関係するため、目先の便利さだけに捉われないようにしましょう。

住宅ローンで気をつける点は?

住宅ローンの返済は、定年退職までに終えることが理想です。

しかし、おひとりさまで家を買おうと決断する年齢はおそらく40代以降でしょう。そこから定年退職までの年数は短いのが現実。そのため、貯蓄や資産運用、退職金などを使って繰り上げ返済を計画することになります。この繰り上げ返済計画は一人で立案するのは難しく、FPの力を借りることをおすすめします。

もうひとつ、住宅ローンで気をつけるべき点があります。

それが「団信(団体信用生命保険)」です。団信は、死亡時、高度障害時に住宅ローンの残債がゼロになる生命保険なのですが、最近は、ガン診断時、急性心筋梗塞や脳卒中を罹患して一定期間の入院をしたときにも適用になる「三大疾病保障付団信」も登場しています。

大病した時に、ひとりの力では住宅ローンの返済は不可能になるため、十分な貯蓄を持つか、団信など保険に加入しておくかの準備が必要です。

三大疾病団信は、一般的に金利が0.3%上乗せになります。今後金利が上昇していくと、そこからさらに0.3%の上乗せが必要になるということです。総返済金額が数百万円規模で変わります。

生命保険の見直しも含めて、金利アップ分の負担かけ金と比較しながら慎重に対策する必要があります。

家の維持費はどのくらいかかる?

住宅は買って終わりではなく、維持費にもお金がかかります。

主な維持費を解説していきます。

屋根・外壁の塗り替えとコーキング

屋根・外壁は10年おきに塗装を繰り返す必要があります。また、建物の隙間を埋めるコーキング(シーリング)も同時に必要です。

この費用は100万円~200万円程度です。屋根に穴が開いているなど、補修する部分があったらさらに費用がかかります。これを10年ごとに繰り返すので、30年間で300万円~600万円かかります。

このメンテナンスをしないと、あっという間に建物の躯体に水が浸入し、シロアリが大発生するなどして建物全体が内部から腐朽してしまいます。

最近ではこのメンテナンスが不要な建材も増えています。建物価格は多少高額になるますが、メンテナンス費用が安く済むので検討の余地はあります。

エアコンや給湯器など設備の交換・修理

エアコンやエコキュート、ストーブ、太陽光発電システム、床暖房システムなど、定期的に交換や修理が必要な設備があります。

設備が増えれば増えるほど、その費用は高くなります。

ハイテクな設備で住宅は高性能になりますが、この費用を考えると、「高性能な建物性能+アナログな設備」が最も維持費が少ないということになります。

固定資産税・都市計画税

建物と土地の価値に応じて、税金の請求が毎年あります。

固定資産税の金額は物件によって異なるため、住宅メーカーの担当者に問い合わせてください。

一般的に15万円(年間)程度ですが、大都市部では60万円(年間)となることもめずらしくありません。

火災保険・地震保険

火災保険・地震保険は、2025年現在は5年一括払いが多く、かけ金は15万円~30万円ほどです。

しかし建物が古くなるにしたがい、かけ金も高くなっていきます。

修繕・リフォーム

築後20年以上が過ぎると、老朽化や使い勝手の向上のためにリフォームや修繕をすることが次第に増えます。

メンテナンス費用を含めて、「予算」です。

多くの人は、物件を買う時の資金計画(イニシャルコスト)を予算と考えていますが、実際には維持費(ランニングコスト)を含めて、予算を比較検討すべきです。

ランニングコストは、住宅専門のファイナンシャルプランナーにアドバイスをもらいましょう。住宅営業マンはあまり触れたがらないことも多々あります。

もし大きな病気を患ったらどうなる?

若い時はいいのですが、高齢になってくると健康上の不安が増えてきます。一人暮らしでもし脳出血などの思い急病を患ったら、介助し救急車を呼んでくれる人がいないため、嘔吐物をのどに詰まらせ命を落とす危険があります。

自宅を購入したとしても、いつまでその家で暮らすのか明確にしておく必要があります。

一人暮らしが危険になる時は必ずきます。

将来は自宅を売却し、老人ホームなどに入居することも検討しましょう。その際、自宅を確実に売却できるよう、立地や建物の資産価値を意識してください。

値段が安いあまりに僻地に家を買ったり、ひとり暮らしだからと趣味性を強くした奇抜な家では、売却が難しくなります。特に男性の場合、ガレージハウスに憧れるものですが、売却は極めて困難になります。

おひとりさまの家の購入は、住宅専門FPに必ず相談

おひとりさまの場合、家計は常にリスクに晒されています。

家を買う時にはリスクを明確にし、安全な予算を把握する必要があります。

家を買う前に、長岡FP事務所にご相談ください。