新築戸建て住宅の購入を検討している方は、昨今の住宅価格の高さに驚いたことがあると思います。
わずか10年前と比べても、1.5倍ほど高くなっている肌感覚です。
人件費の高騰、建材価格の高騰、円安の影響、高額設備の増加、断熱基準の変更、地方都市でも地価の上昇・・・と、戸建ての住宅価格が安くなる要素は今後見当たりません。
その結果、家を買う人たちには二つの影響があります。
- ぺアローンでの購入が増加
- 住宅ローンの返済期間の長期化
家が高すぎるので、住宅ローンは夫婦で共同で借りるしかなくなり、返済期間も最長に伸ばすしかなくなったというわけです。
しかし、返済期間40年~50年という超・長期の住宅ローンを借りても大丈夫なのでしょうか?
住宅専門ファイナンシャルプランナーが解説していきます。
定年退職後に住宅ローン返済は、無理
ぺアローンで借りるのは、別に世帯収入が少ないという理由だけではありません。夫婦が助け合って返済するのですから、夫婦どちらも債務を負い、共有名義にするのは当然です。
しかし、返済期間を最長にするのは、「銀行がその返済期間でなければ貸してくれない」からです。
住宅ローンの審査には、返済負担率という項目があります。
年収に対する年間の返済額が一定の割合を超えてはいけないという指標です。
世帯年収が少なければ、返済負担率が高くなるため、返済期間を延ばすしか方法がなくなります。
ここで矛盾があるのです。
世帯年収が少ないのであれば、定年退職後に住宅ローンを返済するだけの貯えを持てない
定年退職後に老齢年金から住宅ローンを返済するのは、不可能に近いでしょう。
定年退職時に残った住宅ローンはどうする?
たとえば、定年退職の65歳に住宅ローンの残債が2,500万円残っていたとします。
これはどうするべきでしょうか。
主な選択肢としては
- 退職金と貯蓄を使って全額繰上げ返済
- 退職金と貯蓄を使って一部繰上げ返済→毎月の返済額を減らす
- 若いころからコツコツと繰り上げ返済を繰り返しておく
- 定年退職後も働く
この4つになるでしょう。
これが東京都心のマンションであれば、高額で売却できる可能性があるため、心配はありません。売却して残債を清算することは用意で、むしろ老後生活の資金に使えるほど余裕が生まれることさえあります。
しかし地方の戸建て住宅ではそのような案件はほとんどありません。家を売却しても、残債を清算できるほどの値段にはなりません。
購入時に自己資金を用意しなかった場合は、家を売っても残債がまだ残るのです(オーバーローンと呼びます)
定年退職時までに貯蓄を用意し、全額繰上げ返済をするのがベストですが、そもそも年収が低く長期のローンを組んでいるため、非現実的かと思います。
若いころから繰り上げ返済を繰り返していけば、定年退職後の残債は少なくなります。しかし、これも理屈上の話で、住宅の修繕費や教育費などがかさみ、うまく繰り上げ返済ができないでしょう。
投資をしたらいい?
では、定年退職に向けて投資を行うのはどうでしょうか。
「こつこつ毎月積み立て投資をすれば、老後に2,500万円までふやせるかもしれない」
そう考えるかもしれません。金融業者もそう言うでしょう。
確かに、年利5%で、毎月4万5,000円を25年積み立てていけば、1,350万円の元金が約2,670万円になります。
そう聞いたところで、25年間も毎月45,000円が家計から無くなるのは厳しいし、年5%という条件もどうなのかという感じです。
家の予算を安くすればいい?
では、家の予算を安くすればいいのではないか?と考える人が大勢います。
たしかに、理屈上はそうかもしれません。
ところが住宅には維持費が付きものです。固定資産税、屋根と外壁の塗り替え、設備の交換、家電の買い替え、火災保険、修繕など、新築から10年を経過したころから一気にお金がかかり始めます。
極端なローコスト住宅の場合、建物の寿命も短く考えておくのが無難です。木造住宅の寿命は80年とする大学の研究がありますが、ローコスト住宅の場合は劣化スピードが速く、老後に寿命が尽きる可能性もあります。
現実的には寿命が尽きても解体する費用も厳しいため、応急的な処置を施して住み続けることになるでしょう。内部結露から躯体が腐朽し倒壊の心配をするようになると、QOLが低いまま老後生活を送ることになります。
実際のところ、2010年代に流行したローコスト住宅は、2025年現在、わずか築10数年とは思えないほど劣化している物件が多数あります。
総合的な戦略が必要
実際のところ、地方で戸建て住宅を買い、安全な家計を一生続けるためには、住宅専門のFPのアドバイスが必要です。
- ローコスト住宅を避ける
- 投資の成功を前提としたライフプランを立てない
- 自己資金を用意する
- 年収が低すぎる場合投資はしない
このような方針で、キャッシュフローを組み立てていく必要があるのです。
住宅購入時のFP相談は長岡FP事務所にご依頼ください。