マイホームは人生で最も大きな買い物の一つ。そして、その成否を大きく左右するのが「住宅ローン選び」です。
数ある住宅ローンの中でも、将来の金利変動リスクに備えたい方から根強い人気を誇るのが、全期間固定金利の「フラット35」。
「名前は聞いたことがあるけれど、詳しい仕組みはよくわからない」「変動金利と比べてどうなの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
最近、変動金利の上昇が始まり、安全な逃げ道としてフラット35が注目を集めています。
本記事では、2025年現在の最新情報に基づき、フラット35の基本的な仕組みから、意外と見落としがちな諸費用、そして多くの人に選ばれる魅力とメリットまで、余すところなく解説します。
この記事を読めば、あなたがフラット35を選ぶべきかどうかの判断できると思います。
そもそも「フラット35」とは?基本の仕組み
フラット35は、独立行政法人である住宅金融支援機構が、全国300以上の民間金融機関(銀行、信用金庫、モーゲージバンクなど)と提携して提供している住宅ローンです。
まずは3つの特徴を解説します。
最大の特徴は「全期間固定金利」
フラット35の最大の魅力は、借入期間中(最長35年)金利が一切変わらない「全期間固定金利」である点です。
例えば、変動金利型のローンの場合、市場金利の変動に伴って返済額が増減する可能性があります。将来、市場金利が大幅に上昇した場合、毎月の返済額が増え、家計を圧迫するリスクが常に付きまといます。
日本では長年、ゼロ金利政策がとられ、金利の上昇を経験したことがない人も増えています。もし住宅ローンの金利が大きく上昇し続けたら、多くの人は未経験のパニックに陥るはずです。
一方、フラット35であれば、借入時に決定した金利と毎月の返済額が、完済までずっと変わりません。日本の経済情勢に関係なく、毎月の返済額は常に定額です。
これにより、将来にわたる家計のシミュレーションが非常にしやすく、子どもの教育費や老後資金など、長期的なライフプランを安心して立てることができます。
住宅の「質」が求められる
フラット35はどんな家を購入しても利用できるわけではありません。購入する住宅が住宅金融支援機構の定める技術基準に適合している必要があります。
この基準には、耐震性、耐久性、省エネルギー性、バリアフリー性など、住宅の品質に関する厳しい項目が含まれています。
気密断熱性能や、省エネルギー性能、耐久性が低い、極端なローコスト住宅ではフラット35を利用できないことがあります。
一見すると「高額な住宅でないと利用できないのか」と感じるかもしれません。しかし、これは「質の高い、安心して長く住める住宅である」というお墨付きを得られることを意味します。住宅の資産価値を維持する上でも、この技術基準は非常に重要な役割を果たしているのです。
買取型と保証型
少し専門的になりますが、フラット35には「買取型」と「保証型」の2種類があります。
- 買取型 民間金融機関が貸し出した住宅ローン債権を、住宅金融支援機構が買い取る仕組み。一般的なフラット35はこちらを指します。
- 保証型 民間金融機関の住宅ローンに住宅金融支援機構が保険をかける仕組み。金融機関が独自に金利や商品設計を行えるため、買取型より低い金利が提示されることもあります。
どちらも全期間固定金利という点は共通していますが、金利や手数料、団信の取り扱いなどが異なる場合があるため、比較検討する際は注意が必要です。
見落とし厳禁!フラット35の諸費用を徹底解剖
住宅ローンで重要なのは金利だけではありません。初期費用としてかかる「諸費用」も総返済額に大きく影響します。フラット35で特に注意すべき諸費用を見ていきましょう。
融資手数料
諸費用の中で最も大きな割合を占めるのが、金融機関に支払う「融資手数料」です。これは、フラット35を取り扱う金融機関によって大きく異なります。
手数料のタイプは主に2つあります。
- 定率型「借入額の2.2%(税込)」のように、借入額に対して一定の割合で計算されます。
- 定額型 「一律33,000円(税込)」のように、借入額にかかわらず一定の金額です。
一般的に、「定率型」は金利が低めに設定され、「定額型」は金利が高めに設定される傾向があります。
ほとんどの金融機関では定率型を採用しています。金融機関によって掛け率が変わるため、注意が必要です。
定額型を採用しているのはごく少数の金融機関だけです。
ちなみに多くの場合、融資手数料は最低額を設定しています。たとえば融資金額が1,000万円以下の場合、22万円が最低額として必ず必要です。
保証料・保証人は原則不要
民間の住宅ローンでは一般的である「保証料」や「連帯保証人」が、フラット35では原則として不要です。保証料は数十万円に及ぶこともあるため、これが不要な点は初期費用を抑える上で大きなメリットと言えるでしょう。
団体信用生命保険(団信)料
団体信用生命保険(団信)は、ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になった場合に、保険金でローン残高が完済される制度です。
民間の住宅ローンでは加入が必須で、保険料は金利に含まれていることがほとんどです。しかし、フラット35では団信への加入は任意です。
- 加入する場合: 住宅金融支援機構が提供する「新機構団信」に加入します。保険料はローン金利に上乗せ(一般的に年0.2%程度)する形ではなく、別途「特約料」として年に一度支払います。
- 加入しない場合: 健康上の理由などで団信に加入できない方でも、フラット35本体の利用が可能です。これは、他のローンでは借入を断られてしまう可能性がある方にとって、大きなセーフティネットとなります。
その他の諸費用
融資手数料以外にも、住宅ローン契約全般で必要となる以下の諸費用がかかります。
- 印紙税 ローン契約書に貼付する印紙代
- 登記費用 土地や建物の所有権を登記するための登録免許税、司法書士への報酬
- 火災保険料 必須加入。地震保険も検討が必要
- 適合証明書交付手数料 物件が技術基準を満たしていることを証明する書類の取得費用
これらの費用も事前にリストアップし、資金計画に組み込んでおくことが重要です。
また、フラット35を利用するためには建物性能を一定基準以上にする必要があります。建物価格はその分高くなることを覚えておきましょう。
なぜ選ばれる?フラット35の魅力とメリット
諸費用も理解した上で、改めてフラット35の魅力とメリットを深掘りしてみましょう。
なぜ、最近、フラット35を選ぶ人が増えているのでしょうか。
メリット① 将来の金利上昇リスクを完全にシャットアウト
繰り返しになりますが、これが最大のメリットです。
「これから35年間、毎月の支払いがずっと同じ」という安心感は、何物にも代えがたい安心があります。特に、子育て世代や、これから教育費のピークを迎える家庭にとって、家計の見通しが立つことの精神的な安定は計り知れません。
メリット② 金利引き下げ制度で、よりお得に
フラット35には、質の高い住宅を取得する人への優遇制度として「フラット35S」があります。
省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性など、高い基準を満たす住宅を取得する場合、当初5年間または10年間の金利が一定期間引き下げられます。
さらに、子育て世帯や若者夫婦世帯が特定の条件を満たすと金利が引き下げられる「フラット35子育てプラス」も用意されています。
これらの制度をうまく活用することで、総返済額を大きく圧縮することが可能です。
メリット③ 個人事業主やアルバイトでも融資対象
フラット35は、年収に占めるすべての借入れの年間合計返済額の割合(総返済負担率)の基準が明確です。(年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下)
この基準を満たせば、自営業者(個人事業主)、転職して間もない方、契約社員、パート・アルバイトなど、民間のローンでは審査が厳しくなる職業の方でも利用しやすいという特徴があります。
収入の安定性などを多角的に審査してくれるため、比較的利用しやすいと言えるでしょう。
「フラット35は審査が緩い」と誤った認識を持つ住宅営業マンが散見されますが、フラット35の審査は決して緩くはありません。融資が可能な「働き方」「職業」の幅が広いというだけであって、借金の返済が遅れた履歴がある場合は他の金融機関と同様に審査は厳しいものとなります。
メリット④ 繰上げ返済の手数料が無料
家計に余裕ができた際に、元金を前倒しで返済する「繰り上げ返済」。
フラット35では、住宅金融支援機構の住まいと暮らしのWEBサイト「住・My Note」を利用すれば、繰り上げ返済手数料が無料です(最低返済額10万円から)。
銀行では一般的に繰り上げ返済をする際には手数料が必要です。一部繰上げ返済で22,000円~、全部繰り上げ返済で33,000円~など、銀行によって大きく異なりますが、高額な設定です。そのため頻繁な繰り上げ返済ができません。
フラット35であれば手数料を気にすることなく、少額からこまめに返済を進めることで、総利息を効果的に減らすことができます。
メリット⑤ 団信の加入は強制ではない
あまりお勧めしませんが、フラット35は団信に加入しない選択も可能です。
もちろんこの場合は、債務者が死亡しても遺族に借金が残ることになります。なぜこのようなことをするのかというと、
- 生命保険でカバーできている
- 健康状態が悪く団信に加入できない
このどちらかが理由です。
5年前に脳梗塞を罹患しているという場合、銀行での審査はNGとなるはずです。しかしフラット35であれば団信に加入せず融資だけを受けることができます。
リスクがあるため究極の選択となりますが、団信なしというのはメリットのひとつです。
2025年以降、フラット35は優先すべき選択肢
フラット35は、借入当初の金利だけを見れば、変動金利型ローンより高く設定されていることがほとんどです。しかし2024年から金利上昇が始まり、今後は機械的に上昇し続けるとも予想されています。
「景気が悪いから金利は上げられない」と主張するFPもいますが、現実は違います。日本銀行の政策の転換によって、段階的な利上げを準備している段階に入っています。
2010年代に流行したローコスト住宅は、特に地方の低所得世帯がこぞって買いました。多くはぺアローンで、なおかつ世帯年収の10倍に迫る融資を受けた人も少なくありません。この方々は金利上昇によって、家を売却しようとするケースが激増するでしょう。しかしローコスト住宅であるため建物の品質が低く、立地は悪く、リセールはうまくいきません。・・・そして返済期間は40年であることから、自己破産を選択する人も出ると予想されます。いずれ社会問題となるのではと、筆者は想像しています。
将来の金利上昇リスクを回避できるのは、ものすごく大きな安心感があります。
「将来金利が上昇したらフラット35に借り換えればいい」と安易に考えるのはお勧めできません。
住宅ローンは「健康状態が良好で、年齢が若い」ことが融資の条件のひとつです。もし過去に大病をしていると、借り換えは一切できないことになります。
そのため住宅を購入する時点から、フラット35を積極的に検討することをお勧めします。
住宅ローンは借換えを前提とせず、長期で家計を見据えて決断する必要があります。必ず住宅専門のファイナンシャルプランナーに相談して、判断するようにしてください。