【2025年版】自宅を資産に!ホームエクイティローンとリバースモーゲージの違いを徹底解説

「子どもの教育費でまとまったお金が必要になった」「退職後の生活資金に少し不安がある」「家のリフォームをしたいけれど、手元の資金は減らしたくない」。こうしたライフステージの変化に伴う資金ニーズに対し、自宅の資産価値を活用するという選択肢が注目されています。

かつて「家は買うもの、住むもの」という意識が強かった日本でも、近年、所有する家を担保に資金を調達する「ホームエクイティローン」「リバースモーゲージ」といった金融商品の認知度が徐々に高まっています。

しかし、これらの商品は名前が似ている部分もあり、その違いを正確に理解している方はまだ少ないかもしれません。

この記事では、現役世代の大きな出費からシニア層の生活資金確保まで、自宅を活用した資金調達方法を網羅的に解説します。それぞれの仕組みやメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身のライフプランに最適な選択肢を見つけるための一助となれば幸いです。

ホームエクイティローンとは?現役世代の力強い味方

ホームエクイティローンは、主に現役世代が教育資金やリフォーム費用など、一時的にまとまった資金が必要になった際に活用できるローンです。

ホームエクイティローンの仕組みを分かりやすく解説

ホームエクイティローンとは、自宅の資産価値(エクイティ)を担保にお金を借りることができる金融商品です。「エクイティ」とは、現時点での自宅の評価額から、まだ返済が残っている住宅ローンの残高を差し引いた、いわば「純粋な資産価値」の部分を指します。

エクイティの計算式 エクイティ=自宅の評価額−住宅ローンの残高

例えば、評価額が4,000万円の自宅で、住宅ローンの残高が1,500万円の場合、エクイティは2,500万円です。金融機関はこの2,500万円の範囲内で、審査を通じて融資可能額を決定します。借りたお金は、住宅ローンなどと同じように、毎月元金と利息を返済していくのが基本です。

ホームエクイティローンのメリット・デメリット

便利なホームエクイティローンですが、利用する前にメリットとデメリットをしっかり把握しておくことが重要です。

メリット

  • 比較的低金利:不動産という確かな担保があるため、カードローンや使途自由なフリーローンといった無担保ローンに比べて金利が低い傾向にあります。
  • まとまった資金の借入が可能:自宅の評価額やエクイティによっては、数百万円から数千万円といった高額の融資を受けられる可能性があります。
  • 資金の使い道が比較的自由:事業性資金や投機目的の利用を除き、教育資金、リフォーム費用、医療費、他の高金利ローンの借り換えなど、幅広い用途に利用できます。

デメリット

  • 自宅を失うリスク:最大のデメリットです。万が一返済が滞った場合、担保である大切な自宅を差し押さえられ、失う可能性があります。
  • 諸費用がかかる:融資を受けるにあたり、事務手数料や保証料、不動産鑑定費用、抵当権設定のための登記費用など、様々な諸費用が発生します。
  • 融資までに時間がかかる:不動産の評価や審査が必要なため、申し込みから融資実行まで数週間から1ヶ月程度かかるのが一般的です。急な資金ニーズには対応しにくい場合があります。

日本での現状と取り扱い金融機関の例

アメリカでは一般的なホームエクイティローンですが、日本ではまだ限定的です。その理由として、中古住宅市場が未成熟で家の資産価値が年々下落する傾向にあることや、「家を担保にお金を借りる」ことへの心理的な抵抗感が挙げられます。

日本では「不動産担保ローン」とほぼ同義で扱われることが多く、一部のネット銀行や地方銀行が積極的に取り扱っています。(例:オリックス銀行、愛媛銀行、福岡銀行など)

リバースモーゲージとは?シニア層の生活を支える仕組み

リバースモーゲージは、主にシニア層が老後の生活資金を確保するために設計された、ホームエクイティローンとは全く異なる発想の金融商品です。

「逆」住宅ローンの仕組みとは?

リバースモーゲージの「リバース」は「逆」を意味します。通常の住宅ローンが「家を買うために借り、返済と共にローン残高が減っていく」のに対し、リバースモーゲージは「所有する家を担保にお金を借り、利用するごとに借入残高が増えていく」という逆の仕組みを持っています。

利用者は、自宅に住み続けながら、金融機関から一括または年金形式で融資を受けられます。そして、生存中は基本的に利息のみを支払い、元金は契約者本人が亡くなった後に、相続人が自宅を売却するなどして一括で返済します。

リバースモーゲージのメリット・デメリット

老後の生活を豊かにする可能性がある一方、特有のリスクも存在します。

メリット

  • 生存中の返済負担が軽い:毎月の支払いは利息のみなので、年金収入が中心のシニア層でも返済負担を抑えられます。
  • 住み慣れた家に住み続けられる:自宅を売却する必要がなく、愛着のある家で生活を続けながら資金を得ることができます。
  • 生活の質を向上できる:年金収入にプラスアルファの資金を得ることで、趣味や旅行、医療・介護への備えなど、よりゆとりのある生活を送ることが可能になります。

デメリット

  • 金利上昇リスク:変動金利が一般的なため、市場金利が上昇すると毎月の利息支払額が増加する可能性があります。
  • 相続時の注意点:契約者が亡くなった後、相続人は原則として担保物件を売却して元金を返済する必要があります。もし家を残したい場合は、相続人が自己資金で一括返済しなければなりません。
  • 対象不動産や地域の制限:金融機関によっては、融資対象となる不動産を土地の評価額が高い都市部に限定している場合があります。

リバースモーゲージが向いている人とは?

  • 持ち家はあるが、年金だけでは生活資金が少し足りない方
  • 自宅に住み続けたいが、後継ぎがいなく、家を相続させる予定がない方
  • 高齢者向けの施設に入るための一時金や、バリアフリーリフォームの費用が必要な方

【徹底比較】ホームエクイティローンとリバースモーゲージはここが違う!

どちらも自宅を担保にしますが、両者は全くの別物です。ここで改めてその違いを整理しましょう。

目的と対象者が根本的に異なる

  • ホームエクイティローン現役世代が中心。「一時的な資金需要」(教育、リフォーム等)に応えるためのローン。
  • リバースモーゲージシニア層が中心。「継続的な生活資金確保」を目的としたローン。

最大の違いは「返済方法」と「契約の終わり方」

これが両者を分ける決定的な違いです。

  • ホームエクイティローン:借りた直後から「元金と利息」を毎月返済し、契約期間内に完済を目指します。
  • リバースモーゲージ:生存中は「利息のみ」を毎月返済し、元金は死亡後に一括で精算します。
比較項目ホームエクイティローンリバースモーゲージ
主な利用者年齢を問わない(主に現役世代)主に満55歳以上のシニア層
返済方法元金+利息を毎月返済利息のみを毎月返済
元金の精算契約期間内に完済死亡後に一括返済
契約の性格一般的なローン(借入・返済)終身型の生活資金確保

リバースモーゲージに似た他の選択肢も知っておこう

自宅を活用する方法は、この二つだけではありません。状況によっては、これから紹介する選択肢がより適している場合もあります。

① リースバック:所有権を移してまとまった資金を得る

自宅を不動産会社などに一度売却し、売却代金を一括で受け取ります。その後、買主と賃貸契約を結び、毎月家賃を支払いながら同じ家に住み続ける方法です。所有権が移転する点がリバースモーゲージとの最大の違いです。まとまった現金がすぐに必要な場合や、家の所有にこだわりがない場合に有効な選択肢です。

② 不動産担保型生活資金:公的な安心感を求めるなら

各都道府県の社会福祉協議会が運営する公的な融資制度で、「公的リバースモーゲージ」とも呼ばれます。低所得の高齢者世帯を対象としており、民間のローンに比べて金利が低いなどのメリットがありますが、収入要件や連帯保証人が必要など、利用条件は厳格です。

③ 不動産担保ローン(シニア向け):毎月返済できる方向け

一般的な不動産担保ローンも選択肢の一つです。リバースモーゲージとは異なり、借りた後すぐに元金と利息の返済が始まりますが、資金使途がより自由であったり、審査基準が異なる場合があります。年金などの安定収入があり、毎月の返済が可能なシニア層にとっては検討の価値があります。

自分に合った資金調達方法を見つけるためのチェックポイント

どの方法が最適か、迷ってしまう方も多いでしょう。以下の4つのポイントでご自身の状況を整理してみてください。

1. 「所有権」をどうしたいか?

  • 持ち続けたい → ホームエクイティローン、リバースモーゲージ、不動産担保ローン
  • 手放しても構わない → リースバック

2. 「いつ」「何のために」お金が必要か?

  • 一時的にまとまったお金が今すぐ必要 → ホームエクイティローン、リースバック
  • 老後の生活費として、少しずつ長く使いたい → リバースモーゲージ、不動産担保型生活資金

3. 「毎月の支払い」は可能か?

  • 元金と利息を返済できる → ホームエクイティローン、不動産担保ローン
  • 利息のみの支払いが限界 → リバースモーゲージ、不動産担保型生活資金
  • 家賃としてなら支払える → リースバック

4. 相続をどう考えているか?

  • 子どもに家を残したい → 慎重な検討が必要。ローンを完済するか、相続人が返済を引き継ぐ覚悟が求められます。
  • 家を相続させる予定はない → リバースモーゲージやリースバックが有力な選択肢になります。

専門家と相談し、計画的な資金活用を

この記事では、ホームエクイティローンとリバースモーゲージを中心に、自宅を活用した様々な資金調達方法について解説しました。

  • ホームエクイティローンは、現役世代が一時的な出費に備えるためのローン。
  • リバースモーゲージは、シニア層が老後の生活資金を確保するための仕組み。
  • その他にもリースバック公的制度など、多様な選択肢が存在する。

どの方法にもメリットとデメリットがあり、ご自身のライフプランや資産状況、そして将来に対する考え方によって最適な選択は異なります。

特に自宅という大切な資産に関わることですので、ご自身だけで判断せず、家族とよく話し合うことはもちろん、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーといった専門家にも相談し、無理のない計画的な資金活用を心掛けてください。