親からの住宅資金贈与の無申告、絶対にやめて
マイホームの購入は、人生における最も大きな買い物の一つです。その際、両親や祖父母から資金援助を受けられることは、非常に心強く、ありがたいことでしょう。
しかし、その好意に甘えて税金の手続きを怠ると、後になって税務署から突然指摘を受け、多額の追徴課税を支払うことになります。
「少しの金額だからバレないだろう」「家族間のお金のやり取りまで税務署は見ていないはず」「金持ちしか指摘されないよ」などといった考えは、甘いと言わざるをえません。
この記事では、なぜ親からの住宅購入支援が税務署にバレるのか、その具体的な仕組みから、贈与税の基本、賢く活用できる非課税制度、そして万が一に備えた正しい手続きまで、徹底的に解説します。
安心して親からの支援を受け、理想のマイホームを実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
結論から言うと、親からの住宅購入支援は税務署にバレる可能性が極めて高い
まず結論からお伝えします。住宅購入時に親から受けた資金援助は税務署に筒抜けです。
無申告は税務署にバレる可能性が極めて高いです。
金額の大小にかかわらず、「バレない方法はない」と考えてください。
税務署はあらゆる方法で、不審なお金の流れを察知できるのです。
なぜ「バレない」と考えてしまうのか
住宅購入時の資金贈与を申告しない人達が、「どうせバレない」と考える心理はなぜなのでしょうか。
それは基本的に「仕事上で税務署と関わった経験が少ない」からです。
自営業者や会社経営者のみなさんは、税務署を甘く見ているとどういうことになるのか、恐怖を持って知っているので、バレないなどと考えることはしません。
また、「現金手渡しなら記録が残らない」「家族間のやり取りにまで介入してこないだろう」と考えてしまう人も大勢います。
しかし、税務署は私たちが想像する以上に、個人のお金の動き、特に不動産や高級車を購入するときの高額なお金の動きを正確に把握する仕組みを持っています。
税務署がお金の流れを把握する仕組み
税務署は、個人の確定申告や企業の法人税申告などから得られる膨大なデータを保有・分析しています。これを「国税総合管理システム(KSKシステム)」と呼び、全国の国税局と税務署をオンラインで結んでいます。このシステムにより、個人の過去の所得や資産状況、家族構成などを瞬時に把握できるのです。
少し分かりにくいかもしれません。ある例を挙げて説明します。
年収450万円の大卒の29歳の男性が、現金一括で5,000万円のマンションを購入したとします。この際、現金一括で高額の不動産を購入したという事実は、いち早く税務署が察知します。
ここで税務署は、「なぜ年収450万円の会社員の29歳が、5,000万円の現金を持っているのか」という疑問をもつわけです。22歳から29歳までの7年間で得た収入は税込みで3,150万円のはずです。手取りはもっと減ります。
理屈上、5,000万円の現金を持っているのは不自然なのです。どうやって5,000万円を持ってきたのか。
不審ではない可能性はいくつかあります。
- お年玉を貯めた
- 学生時代にアルバイトをして貯めた(所得税は納税している)
- 宝くじが当たった
- 生命保険金が入った
などです。これらはすぐに調べがつきます。
多くはそうはありません。可能性が大きいのは脱税です。つまり・・・
そして、ある日、本人に「お尋ね」のお手紙が届くわけです。その金の出所、きっちり税務署に説明してもらいましょうか、ということです。
これがお尋ねの書面です。
これは多額の自己資金を出した人にほぼ届く書面なので、正当な資金で購入しているなら慌てる必要はありません。しかし無申告の自己資金がある場合、もう言い逃れはできません。無申告でした、と正直に申し出て、正当な額の贈与税とペナルティを支払ってください。

住宅資金贈与での脱税が発覚する5つの典型的なケース
では、具体的にどのようなタイミングや情報から、親からの資金援助が税務署に発覚するのでしょうか。
代表的な5つのケースをご紹介します。
ケース1 不動産購入の「登記情報」から
不動産を購入すると、その土地や建物が誰のものであるかを公に示す「所有権移転登記」を法務局で行います。
この登記情報は、税務署も閲覧可能です。登記された情報と、購入者の収入・資産状況を照らし合わせ、不自然な点があれば調査の対象となります。調査は金融機関に直接依頼をし、口座の出入りを報告させています。金融機関はその調査に応じる義務があります。
調査の結果、親から住宅メーカーへの直接の振り込みがあったり、親から子供の口座への振り込みがあったりと、贈与の証拠が見つかります。
ケース2 税務署からの「お尋ね」から
不動産を購入してしばらくすると、税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」という書類が送られてくることがあります。これは、登記情報を基に「この不動産をいくらで、誰のお金で買いましたか?」と確認するためのアンケートです。
この書類に、購入資金の出所を偽って回答したり、回答しなかったりすると、税務署はより強い対応をしてきます。
ケース3 将来の「相続税調査」で過去の贈与が発覚
税務署からのお尋ねを何とかやりすごしたとしましょう。しかし後で発覚するタイミングがあります。
最も多いのが、親が亡くなった後の「相続税調査」で発覚するケースです。
相続税の調査では、亡くなった方(被相続人)の過去数年分(最大10年)の預金口座の動きが徹底的に調べられます。その過程で、子供の住宅購入時期に不自然な高額出金があれば、「これは相続財産の前渡し、つまり生前贈与ではないか?」と指摘されるのです。
たとえば、親が高額の現金を引き出し、子供に手渡しで贈与していた疑いをかけられるわけです。
ケース4 金融機関からの「支払調書」
銀行は、1日に200万円を超える現金の入出金や、海外への送金など、疑わしいと判断した取引を税務署に報告する義務があります。
親の口座から子供の口座へ一度に多額の資金が移動すれば、その記録は税務署に筒抜けになります。
ケース5 「第三者からの情報提供」から
税務署には第三者からの情報提供窓口が存在します。つまり密告です。
脱税の疑いがある人について情報を求めているのです。
陰湿な知人や親族が何らかの感情のもつれで、仕返しをする魂胆で密告するケースが非常に多いのです。脱税することがそもそもダメなのですが、お金がらみの話題を親族であってもしない方がいいです
余談になりますが、住宅ローン減税においても、不正手続きが密告によってバレるケースがあります。住宅ローン減税は年内に居住していることが適用の条件ですが、「あの家は年末に住んでいなかったのではないか」とチクるわけです。たとえば、年末年始に完成見学会をやっている場合です。住民票だけを移して減税手続きをしている人はいます。
それを探し出し、密告するのが趣味の人がいるのです・・・
まずは基本を理解!親からの資金援助にかかる「贈与税」とは?
親からの資金援助が税務署にバレる仕組みをご理解いただいたところで、次にかかる税金「贈与税」の基本を学びましょう。
個人から財産をもらった時にかかる税金が贈与税です。
暦年贈与と110万円の基礎控除
贈与税には、1人あたり年間110万円までなら税金がかからない「基礎控除」という仕組みがあります。これを「暦年贈与」と呼びます。つまり、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。
しかし、住宅購入資金となると110万円を超えるケースがほとんどでしょう。その超えた部分に対して贈与税が課税されます。
贈与税はいくらかかる?税率と計算方法
贈与税の税率は、もらった金額が大きくなるほど高くなる「累進課税」方式です。また、親や祖父母(直系尊属)から子や孫(18歳以上)への贈与は「特例税率」が適用され、それ以外の贈与(兄弟間、夫婦間など)の「一般税率」よりも税率が少し優遇されています。
【特例贈与財産用(親から子へ)の速算表】
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
例えば、親から1,000万円の住宅資金援助を受けた場合、
- 課税価格:1,000万円−110万円(基礎控除)=890万円
- 贈与税額:890万円×30%(税率)−90万円(控除額)=177万円
となり、177万円もの贈与税を納める必要があります。これではせっかくの支援が目減りしてしまうため、税金から逃げたいと思うのです。
そこで活用したいのが、国が設けている特例制度です。
【知らないと損】住宅購入で使える!贈与税が非課税になる2大特例制度(2025年最新版)
住宅購入という国の政策上も重要なイベントに対しては、贈与税の負担を大幅に軽減できる特例制度が用意されています。これらを使わない手はありません。
特例① 住宅取得等資金贈与の非課税の特例(最大1,000万円)
これは、親や祖父母から住宅購入のための資金贈与を受けた場合に、最大1,000万円まで贈与税が非課税になるという非常に強力な制度です。
- 非課税限度額(2026年12月31日まで)
- 省エネ等住宅※は1,000万円
- 上記以外の一般住宅は500万円
※省エネ等住宅とは、断熱性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であるなど、質の高い住宅として一定の証明がされたものを指します。
この特例は、前述の暦年贈与(110万円)と併用が可能です。つまり、省エネ住宅の場合、最大で1,000万円+110万円=1,110万円まで非課税で贈与を受けられます。
【主な適用要件】
- 贈与者は親や祖父母などの直系尊属であること
- 受贈者(もらう側)は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
- 受贈者のその年の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その資金の全額を住宅購入に充て、かつその家屋に居住すること(見込みでも可)
- 住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること(所得1,000万円以下の場合40㎡以上)
特例②:相続時精算課税制度(2,500万円+年間110万円)
もう一つの選択肢が「相続時精算課税制度」です。これは、原則60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について選択できる制度です。
- 非課税枠:最大2,500万円
- 特徴:
- 2,500万円までの贈与であれば、贈与時点では贈与税がかからない。
- 2,500万円を超えた部分は一律20%の贈与税がかかる。
- この制度を使って贈与した財産は、将来親が亡くなった時に相続財産に加算して相続税を計算する。(いわば税金の支払いを先送りにする制度)
一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与は暦年贈与に戻すことができないため、慎重な判断が必要です。
どっちがお得?制度の選び方と併用について
「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」と「相続時精算課税制度」は併用が可能です。併用した場合、最大で1,000万円(省エネ住宅)+2,500万円+110万円=3,610万円という非常に大きな金額を非課税で贈与できます。
どちらの制度、あるいは併用が最適かは、贈与を受ける金額、親の資産状況、将来の相続税の見込みなどによって異なります。高額な贈与を検討している場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
税務署に指摘されないための「正しい手続き」完全ガイド
これらの特例制度を適用して非課税の恩恵を受けるためには、必ず正しい手続きを踏む必要があります。以下の3ステップを必ず守りましょう。
Step1 贈与の証拠を残す「贈与契約書」の作成
口約束だけでなく、「いつ、誰が、誰に、何を、どのように贈与したか」を明確にするために**「贈与契約書」**を必ず作成しましょう。決まった書式はありませんが、以下の項目は必須です。
- 贈与者の氏名・住所
- 受贈者の氏名・住所
- 贈与した年月日
- 贈与した金額
- 贈与の方法(例:住宅取得資金として、受贈者名義の〇〇銀行口座に振り込む)
- 両者の署名・押印
Step2 お金の動きを明確にする「銀行振込」
親の口座から直接、子供名義の口座へ振り込む形で資金を移動させましょう。
現金手渡しは証拠が残らず、税務署から「名義預金(親のお金を子供の名義で預かっているだけ)」とみなされるリスクがあります。通帳に記録が残る銀行振込が最も安全で確実な方法です。
Step3 特例を使うなら「贈与税の申告」
最も重要なのが、贈与税の申告です。 住宅取得等資金贈与の特例などを利用して、計算上の納税額がゼロになったとしても、「この特例を使いました」という意思表示のために必ず申告が必要です。
- 申告期間: 贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日
- 申告場所: 受贈者(もらった人)の住所地を管轄する税務署
- 必要書類: 贈与税の申告書、戸籍謄本(贈与者との関係を示すため)、登記事項証明書、売買契約書の写し、源泉徴収票など(所得を証明するため)など
この申告を忘れると、特例は適用されず、多額の贈与税とペナルティが課されることになります。
もし申告漏れがバレたら…?想像以上に重いペナルティ
万が一、申告をせずに税務署から指摘を受けた場合、本来の税金に加えてペナルティとして以下の附帯税が課されます。
本来納めるべきだった「贈与税」
これは当然ですが、基礎控除や特例を適用して計算した本来の贈与税を支払う必要があります。
申告しなかった罰金「無申告加算税」
期限内に申告しなかったことに対するペナルティです。税務調査の通知前に自主的に申告すれば5%ですが、調査後に指摘されて支払う場合は、税額に応じて15%~20%が加算されます。
納税が遅れた利息「延滞税」
納税が遅れた日数に応じて課される利息のようなものです。納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、年率で計算されます(税率は年によって変動)。
意図的に隠した場合の最も重い罰金「重加算税」
財産を隠したり、書類を偽造したりするなど、意図的に税金を逃れようとした悪質なケースに適用されます。無申告の場合は40%、過少申告の場合は35%という非常に高い税率が課されます。
これらのペナルティが重なると、本来の納税額の1.5倍以上を支払うケースも珍しくありません。
【Q&A】これって大丈夫?住宅購入時の資金援助に関するよくある質問
最後に、住宅購入時の資金援助に関してよくある疑問にお答えします。
Q1. 援助ではなく「借りた」ことにすれば贈与税はかからない?
A1. 「借りた」と主張するには、客観的な証拠が不可欠です。
単に口約束で「借りただけ」と言っても税務署は認めてくれません。「贈与ではない」と証明するためには、以下の3点セットが最低限必要です。
- 金銭消費貸借契約書(借用書) 借入額、返済期間、利率などを明記し、双方が署名押印したもの。
- 適正な利息の設定 親子間でも、無利子や極端に低い金利は「利息分を贈与した」とみなされる可能性があります。
- 実際の返済実績 契約書通りに、銀行振込などで定期的に返済している客観的な証拠が必要です。
これらの実態が伴わない場合、「実質的な贈与(みなし贈与)」と判断され、課税対象となります。
Q2. 現金を手渡しでもらえばバレない?
A2. バレます。
前述の通り、親の口座から多額の現金が引き出された記録は残ります。
親が自宅の金庫で保管していた現金を手渡しでもらったとしても、登記簿で現金で購入したことが分かるため、その出所を調査されます。
この場合、贈与がバレるだけでは済みません。
そもそもなぜ親が金庫で現金を保管していたのかまで調査されることになります。親が無申告のお金(口座に入れられない訳アリのお金)を持っていた可能性があるのです。
Q3. 親が住宅ローンを肩代わりして返済するのは贈与になる?
A3. はい、贈与です。
本来子供が支払うべき住宅ローンを親が代わりに返済した場合、その返済額相当の金額が親から子へ贈与されたものと判断されます。その年の肩代わり額が110万円を超えれば、贈与税の申告が必要です。
まとめ
住宅購入における親からの資金援助は、それ自体が悪いことでは全くありません。問題なのは、税金に関する知識不足や誤解から、必要な手続きを怠ってしまうことです。
「バレるか、バレないか」で悩むのではなく、「どうすれば正しく、そして賢く支援を受けられるか」を考えることが大切です。
- 親からの支援は「贈与」にあたり、原則として贈与税がかかる。
- 年間110万円の基礎控除を超える場合は、必ず特例制度の活用する。
- 「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」や「相続時精算課税制度」を利用する場合でも、必ず贈与税の申告を行う。
- 贈与契約書を作成し、銀行振込で資金を移動させるなど、証拠をしっかり残す。
- 現金の手渡しでの贈与は、悪質性が高いと見なされる可能性が高い。
これらのポイントを押さえておけば、税務署の調査を恐れる必要はありません。
もし手続きに不安があれば、税務署に相談することをお勧めします。



























・副業の収入があって無申告なのではないか
・親からの贈与を受けたのではないか
・強盗や詐欺など犯罪収益ではないか