マイホームの買い方がよく分からない・・・
「いつかは自分の家が欲しい」
多くの人が抱く夢であり、人生における最も大きな買い物の一つ、それがマイホーム購入です。しかし、その夢を実現するためには、何から始めれば良いのでしょうか?手続きが複雑で難しそう、と感じる方も少なくないでしょう。
この記事では、マイホーム購入を検討し始めた方のために、購入までの具体的な手順を「マンション編」と「注文住宅編」の2つのパターンに分けて、分かりやすく徹底解説します。
資金計画の立て方から、物件探し、契約、そして引き渡しまで、流れを掴むことができます。
すべての基本となる共通の準備
マンションと注文住宅、どちらを選ぶにしても、まず初めに行うべき共通の準備があります。この準備が、理想のマイホーム購入を成功させるための土台となります。
ライフプランニングをイメージする
マイホームは「買ったら終わり」ではありません。そこから何十年と続く住宅ローンの返済と建物の維持が始まります。その費用は超高額です。
一生に渡って支払っていけるでしょうか。まずは、ご自身のライフプランを具体的にイメージすることから始めましょう。
- 家族構成の変化:将来、子どもは何人欲しいか?
- キャリアプラン:転勤や転職の可能性はあるか?収入は今後どう変化しそうか?
- 子どもの教育:どのような教育を受けさせたいか?公立か私立か?
- セカンドライフ:退職後はどのような暮らしをしたいか?どこに住むか?
これらの未来像を描くことで、必要な家の広さや間取り、立地条件が見えてきます。マンションの場合は資産価値が高く、現役時代は職場の近隣に住み、定年退職後は売却し暮らしやすい地方に移住することも選択肢になります。戸建ての場合は売却がマンションほど有利ではないため、終の棲家として考えていく必要があります。
ライフプランを精査することで、住宅のあり方も変わっていきます。
ライフプランをイメージできたら、次は資金計画です。
予算を決める
一生の家計をシミュレーションして、確実に返済できるであろう予算を決めていきます。
- 自己資金(頭金):現在、いくら貯蓄があり、そのうちいくらを頭金として使えるかを確認します。一般的に、物件価格の1~2割程度の頭金を用意できると、住宅ローンの審査が有利になったり、月々の返済額を抑えられたりします。自己資金がないと、将来の借換えも難しくなり、破綻リスクが高くなります。
- 住宅ローンの借入可能額:金融機関のウェブサイトなどで簡易シミュレーションができます。年収に対する年間返済額の割合を示す「返済負担率」は、一般的に25%~35%が目安とされています。しかし、年収800万円の世帯にとって返済負担率35%は月あたり23万円に相当します。これでは金利が上昇したら破綻するのは確実です。金融機関が貸してくれる金額ではなく、返せる金額で計画を立てることが重要です。
- 諸費用:物件価格以外にも、税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税など)や各種手数料(仲介手数料、ローン手数料など)がかかります。新築マンションで物件価格の3~5%、中古マンションや注文住宅(土地購入含む)では6~10%程度が目安です。この諸費用は現金で支払うのが一般的ですので、自己資金の中から別途用意しておく必要があります。
ライフプランニングから予算決め、返済計画、一生の家計の流れ(キャッシュフロー)については、自己流で計算するのは危険です。必ず住宅専門を標榜している独立系FP事務所に相談してください。

初期の情報収集
資金計画と並行して、マイホームに関する情報収集を始めましょう。
- インターネット:不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME’Sなど)や、ハウスメーカー、デベロッパーの公式サイトで、希望エリアの相場観やどんな物件があるのかを広く浅くリサーチします。
- 住宅展示場・モデルルーム:最新の設備やデザインに触れることができます。特に注文住宅を検討している場合は、複数のハウスメーカーのモデルハウスを比較することで、各社の特徴や強みを体感できます。
- 専門家への相談:ファイナンシャルプランナー(FP)に相談すれば、客観的な視点で資金計画のアドバイスをもらえます。不動産会社の担当者と話すことで、より具体的な物件情報や地域の情報を得ることもできます。
ここで注意してほしいのは、「FP」を自称する保険会社や保険代理店に勤務する保険営業マンに相談してはいけないということです。その方々は決して住宅資金の専門家ではありません。保険販売ありきのFP相談は無意味です。
【マンション編】購入のステップと流れ
立地の良さや管理のしやすさから人気の高いマンション。その購入手順を8つのステップで見ていきましょう。
STEP1:希望条件の整理と物件探し
まずは、どんなマンションに住みたいか、具体的な希望条件を整理します。
- エリア:通勤・通学の利便性、生活環境(スーパー、病院、公園など)
- 広さ・間取り:家族構成に合った広さ、部屋数
- 新築か中古か:新築の最新設備か、中古の手頃な価格と選択肢の多さか
- その他:階数、日当たり、ペット可否、共用施設(キッズルーム、フィットネスジムなど)
条件が固まったら、不動産ポータルサイトで物件を探し始めます。気になる物件が見つかったら、不動産会社に問い合わせてみましょう。
STEP2:モデルルーム見学・現地確認
気になる物件が見つかったら、必ず現地に足を運びます。
- モデルルーム(新築):間取りや内装、設備の仕様を確認します。家具が配置されているため広く感じがちなので、実際の寸法をメジャーで測るなど、冷静にチェックします。
- 室内見学(中古):部屋の状態(傷、汚れ、水回り)、日当たり、眺望、風通しなどを細かく確認します。
- 周辺環境:曜日や時間帯を変えて(平日の朝、休日の昼、夜など)複数回訪れ、街の雰囲気や騒音、人通りなどを確認することが重要です。平日に朝に最寄り駅まで歩いてみると気づくことが多いです。
STEP3:購入申し込みと住宅ローンの事前審査
「この物件に決めたい!」と思ったら、不動産会社を通じて「購入申込書」を提出します。この際、申込証拠金(5万~10万円程度)が必要な場合があります(契約に至れば手付金の一部に、契約しなければ返還されるのが一般的)。
同時に、住宅ローンの事前審査(仮審査)を申し込みます。これは、申込者の返済能力を金融機関が仮に審査するもので、この審査に通らないと売買契約に進めないケースがほとんどです。
STEP4:重要事項説明と売買契約
事前審査に通過したら、いよいよ売買契約です。契約の前に、宅地建物取引士から「重要事項説明」を受けます。これは物件や契約に関する非常に重要な説明なので、不明な点は必ずその場で質問し、納得した上で契約に臨みましょう。契約書に署名・捺印し、手付金(物件価格の5~10%が相場)を支払うと、契約が正式に成立します。
STEP5:住宅ローンの本審査と契約
売買契約後、住宅ローンの本審査を申し込みます。事前審査よりも詳細な書類(売買契約書など)が必要となり、審査も厳格になります。無事に承認が下りたら、金融機関と金銭消費貸借契約(ローン契約)を結びます。
STEP6:内覧会(新築)または最終確認(中古)
新築マンションの場合、完成後に「内覧会」が開かれます。部屋の仕上がりをチェックし、傷や汚れ、不具合があれば指摘し、引き渡しまでに補修してもらいます。中古マンションの場合は、引き渡し前に物件の状態が契約時と変わりないか最終確認を行います。
STEP7:残金決済と引き渡し
金融機関で、自己資金の残りと住宅ローン融資金で、物件の残代金や諸費用を支払います(残金決済)。支払いが完了すると、司法書士が所有権移転登記などの手続きを行い、物件の鍵が渡されます。これで、ついにマンションが自分のものになります。
STEP8:入居
鍵を受け取ったら、いよいよ入居です。引っ越しの手配や、役所での住所変更手続き、電気・ガス・水道などのライフラインの契約を進めましょう。
【注文住宅編】購入のステップと流れ
間取りやデザインを自由に決められるのが魅力の注文住宅。マンションとは異なり、「土地」と「建物」を別々に考える必要があります。
STEP1:理想の家づくりと建築会社の情報収集
まずは、どんな家でどんな暮らしをしたいか、家族でじっくり話し合います。
- デザインの方向性:シンプルモダン、和風、北欧風など
- 間取りの希望:リビングの広さ、部屋数、収納の量、家事動線など
- こだわりたい性能:耐震性、断熱性、省エネ性能など
イメージが膨らんできたら、建築会社の情報収集を始めます。建築会社の種類は大きく分けて3つです。
- ハウスメーカー:品質が安定しており、保証も手厚い。規格化されている部分も多い。
- 工務店:地域密着型で、柔軟な対応が期待できる。会社によって技術力やデザイン力に差がある。
- 設計事務所:デザイン性が高く、唯一無二の家づくりが可能。設計料が別途必要。
住宅展示場や完成見学会に足を運び、各社の特徴を比較検討します。
完成見学会(他の人が注文をして完成した家を入居前に見せてもらうこと)は、コロナ禍以降、完全予約制がほとんどです。展示場ではなく他人の所有物なので、マナーが大切です。素足ではいかない、走り回るような年頃の子供は連れていかない、勝手に写真を撮らない、金属製の大きなアクセサリーなどを身に着けない、など気をつけてください。
STEP2:土地探しと購入 、事前審査
家を建てる土地がない場合は、土地探しから始めます。希望エリアや予算を不動産会社に伝え、探してもらうのが一般的です。土地には建築基準法などによる様々な規制(建ぺい率、容積率など)があり、希望通りの家が建てられない場合もあるため、建築会社に相談しながら進めるのが安心です。
土地は唯一無二のものです。気に入ったけど決断できず保留にしていると、他人に取られることも多々あります。理想に近い土地が見つかったら、なるべく早く決断してください。
主体性が乏しく、決断できない夫婦がたまにいます。買うにしろ、買わないにしろ、最初のステップである土地購入を自分たちで決断できないのであれば、住宅購入は先送りにした方がいいです。夫婦でもう少し話し合い、覚悟の程度を確認し合いましょう。
土地探しに前後して、金融機関に住宅ローンの事前審査を提出します。
STEP3:建築会社の選定とプランニング
複数の建築会社に希望を伝え、間取りプランと概算見積もりを提案してもらいます(相見積もり)。
ここで注意するべきなのは、相見積もりが許される時期についてです。注文住宅の場合、設計士が入り具体的な見積もりを出す前に「申し込み」というプロセスを用意しています。10万円程度の費用を支払い、そのまま契約に進んだ場合は代金の一部になり、申し込みを解約する場合は戻ってきます。
この申し込みの時点では一社に絞ることがマナーです。設計の申し込みを複数にしていると、営業マンからの信用が無くなります。営業マンの方から断られることも多々あります。
相見積もり、複数社の比較検討は「設計申し込み」までと覚えてください。
STEP4:建築工事請負契約
申し込み後、詳細な設計(間取り、内外装、設備など)を詰めていき、最終的な仕様と金額が確定したら、建築会社と建築工事請負契約を結びます。契約書には、設計図書、仕様書、見積書などが添付されますので、隅々までしっかり確認しましょう。
STEP5:住宅ローンの本申し込みと金銭消費貸借契約
金融機関に住宅ローンの本申し込みをします。本申し込みが通過した後で、金銭消費貸借契約を交わします。
注文住宅の場合、土地代金、着工金、中間金、最終金と、複数回に分けて支払いをします。
住宅ローンは原則的に建物が引き渡される時に融資される仕組みです。建築中から支払いが発生するため、完成までは「つなぎ融資」を利用するか、「元金据え置き返済」を選択するか分かれます。
つなぎ融資を利用する場合、完成まで団信(団体信用生命保険)に加入できません。建築中に万が一のことがあった場合、「工事が中止され、即時代金を一括清算」することになります。遺族に半端な現場を引き渡されてしまうため、つなぎ融資利用時のリスク対策はFPに相談しておきましょう。
STEP6:建築確認申請
契約したプランが建築基準法などの法令に適合しているか、指定確認検査機関に審査を依頼します。この「建築確認済証」が交付されないと、工事を始めることはできません。
STEP7:着工~上棟~完成
いよいよ工事のスタートです。工事の安全を祈願する地鎮祭を行い、基礎工事から始まります。柱や梁を組み立て、屋根の一番高い部材を取り付ける「上棟(棟上げ)」は、家づくりの大きな節目です。(在来工法の場合。ツーバーフォーの場合は多少異なります)
工事期間中は、定期的に現場に足を運び、進捗状況を確認すると良いでしょう。
職人の方に差し入れをするなど、感謝を伝えることでいい家づくりにつながります。しかしあまりにも頻繁に行くのは職人が集中力を削がれるため、好まれません。
STEP8:完成・施主検査
建物が完成したら、施主(建築主)が立ち会いのもと、最終チェック(施主検査)を行います。設計図通りにできているか、傷や汚れ、建具の不具合などがないか、細かく確認します。問題があれば手直しを依頼します。
STEP9:残金決済と引き渡し
手直しが完了したら、建物の最終金を支払い、鍵を受け取ります。同時に、建物の表示登記や所有権保存登記、抵当権設定登記などの手続きを行います。
STEP10:入居
引き渡しが完了すれば、晴れて新居での生活がスタートします。引っ越しの準備や各種手続きを進めましょう。そして本格的な住宅ローン返済がスタートします。
計画段階で相談した住宅専門のFPに再度予約を入れ、今後のライフプランを再確認します。
住宅購入は、「大人の買い物」です
住宅購入は、夢の実現そのものですが、一方で非常に不安とストレスの中で進めていく現実があります。
住宅ローンを借りるのは非常に強い責任が課される行為です。しかも返済期間は35年~40年。定年退職後も責任が続くことがほとんどです。
予算、返済期間、家計の見直し、貯蓄や資産運用、子供の教育費、老後の資金など、考えることが山ほどあり、それを夫婦でじっくりと話し合っていく必要があるのです。筆者は住宅専門のFPとして数多くの家庭を見てきましたが、住宅購入に成功する夫婦にはある共通した特徴があります。それは
- 夫婦仲がいいこと
- 会話が多いこと
- 大人として成熟していること
この三つです。
夫婦仲が悪く、会話が乏しく、幼い夫婦は住宅購入が上手くいきません。なにひとつスムーズに決断できず夫婦喧嘩したり、住宅営業マンのせいにしたり、クレームをつけてストレスを発散させようとしたり・・・すべての原因は夫婦のコミュニケーションが不足しているせいなのです。
はっきり言うと、まだ子供のような未成熟の夫婦では住宅購入はやめておいた方がいい、ということです。大人の買い物ができず、大変なストレスを味わうだけです。
























