家の「住み替え」完全ガイド|実務フローと注意点、住宅ローン残債・諸経費まで徹底解説

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30代初めに購入した戸建て住宅を、40代になって住み替えたい・・・

そんな状況はめずらしくありません。子供が増えた、周辺環境が悪くなった、転職をした、などライフスタイルが変わってしまうと、住宅を買い替える必要が出るのです。

しかし、住宅ローンを組んで購入し、まだ完済していない段階での住み替えは想像しただけでも大仕事です。

「売却」と「購入」という2つの大きな取引を同時に、あるいは連続して行うため、緻密な計画と知識が不可欠です。素人が思い付きで実行すると、大損する可能性が非常に高いのです。

この記事では、住み替えの基本的な流れから、最大の難関である住宅ローンの問題、そして見落としがちな諸経費まで、実務的なポイントを詳しく解説します。

なぜ「住み替え」が発生するのか?

住み替えの動機は、ライフステージの変化や価値観の多様化に伴い、様々です。

  • ライフステージの変化(最も多い理由)
    • 家族が増える: 結婚、出産、親との同居などで、より広い家が必要になる。
    • 子供の独立: 子供が巣立ち、夫婦二人には広すぎるため、管理しやすい小さな家(ダウンサイジング)へ移る。
    • 子供の進学: 希望する学区への転居。
    • 離婚: 人生が大きく変化する。
  • 仕事の都合
    • 転勤・転職: 勤務先に近い場所への引越し。
    • リモートワークの普及: 都心から郊外へ移り、より広く、仕事部屋を確保できる家へ。
  • 経済的な理由
    • 資産の見直し: 現在の家の売却益(キャピタルゲイン)を元手に、より良い物件に買い替える。
    • 負担の軽減: ローン返済や維持費の負担を減らすため、より安価な物件や地域へ移る。
  • 住環境の改善
    • より良い環境へ: 騒音、日当たり、近隣トラブルなど、現在の住環境への不満解消。
    • 利便性の追求: 駅に近い、商業施設が充実しているなど、利便性を高めたい。

若い時には「家は一生に一度の買い物」と考える人が多いですが、実際はそうでもありません。住み替えが二回目、三回目という人は非常に多いのです。

住み替えの2大手法:「売り先行」と「買い先行」

当然ながら、住み替えには、現在の住まいの売却(売り)と、新しい住まいの購入(買い)の二つのプロセスがあります。

これはどちらを先に行うかで、メリットとデメリットが存在します。

売り先行(売却を先に行う)

流れ: ① 自宅売却 → ② 仮住まい(必要な場合)→ ③ 新居購入

  • メリット:
    • 資金計画が立てやすい: 売却額が確定するため、新居の購入予算を明確に決められます。
    • ローン残債の不安がない: 売却金でローンを完済してから次の購入に進めます。
    • じっくり売れる: 「買い替え特約(※)」に縛られず、納得のいく価格で売却活動ができます。
  • デメリット:
    • 仮住まいが必要になる可能性: 売却から新居の入居までに間が空くと、一時的な賃貸住宅が必要になり、家賃や引越し費用(2回分)が発生します。
    • 希望の物件が見つからないリスク: 売却後に理想の購入物件がすぐに見つかるとは限りません。

買い先行(購入を先に行う)

流れ: ① 新居購入 → ② 自宅売却

  • メリット:
    • 理想の家をじっくり探せる: 売却の期限に追われず、希望の物件を納得いくまで探せます。
    • 仮住まいが不要: 新居に入居してから旧居を売却するため、引越しが1回で済みます。
  • デメリット:
    • 資金繰りが難しい: 新居の購入資金(頭金など)を自己資金で用意する必要があります。
    • 二重ローン(ダブルローン)のリスク: 旧居の売却が完了するまで、新旧両方の住宅ローンを支払う可能性があります。
    • 売却を焦るリスク: 新居のローン返済が始まると、旧居を焦って安値で売却してしまう可能性があります。

【補足】買い替え特約とは? 「買い先行」の際、新居の売買契約書に「万が一、現在の家が〇月〇日までに〇〇万円以上で売れなかった場合、この購入契約は白紙撤回できる」という特約を付けることがあります。買主(自分)を守るための重要な特約です。

東京都心のブランドマンションならともかく、地方の戸建て住宅は売却は決してスムーズにいきません。売却を先行すると数年売れず、自分の年齢が上がってしまうこともあります。原則は、買い先行です。売却に時間がかかっても待てるお金の余裕と、ダブルローンでも銀行が融資してくれる信用度が重要です。

「住宅ローン残債」が残った場合

住み替えにおいて最も注意すべき点が、現在の住宅ローン残債の扱いです。

家を売却する際、金融機関が設定した「抵当権(ていとうけん)」を抹消(リセット)しなければなりません。そして、抵当権を抹消するには、売却と同時に住宅ローン残債を一括返済するのが大原則です。

  • 「アンダーローン」の場合(売却額 > ローン残債)
    • 問題なし。 売却金でローンを完済し、残った利益を新居の頭金などに充てることができます。
  • 「オーバーローン」の場合(売却額 < ローン残債)
    • 問題あり。 売却金だけではローンを完済できず、抵当権を抹消できません。
    • 不足分(売却額で足りない分)を自己資金で補填する必要があります。

オーバーローンの場合の主な解決策

自己資金で補填できない場合、以下の金融商品を利用します。

1. 住み替えローン(買い替えローン)

  • 旧居のローン残債(不足分)と新居の購入費用を、まとめて1本の新しい住宅ローンとして組む方法です。
  • 例: 旧居のローン残債が3,000万円、売却額が2,500万円の場合、不足分の500万円が発生。 新居の価格が4,000万円なら、「不足分500万円 + 新居4,000万円 = 4,500万円」のローンを組む。
  • 注意点: 借入額が大きくなるため、審査が厳しくなります。また、新居の担保価値以上の借り入れになるため、金利が高めに設定されることもあります。

住み替えの「諸経費」

住み替えでは、「売却」と「購入」の両方で諸経費が発生します。これらを予算に組み込んでいないと、資金計画が大きく狂います。

(A) 売却時にかかる諸経費

(目安:売却価格の4%~6%程度)

  • 仲介手数料(不動産会社へ): (売却価格 × 3% + 6万円)+ 消費税 が上限。
  • 印紙税(売買契約書に貼付): 売買金額により数千円~数万円。
  • 抵当権抹消費用(司法書士へ): 1〜3万円程度。
  • ローン繰り上げ返済手数料(金融機関へ): 0円~数万円(金融機関や方法による)。
  • 譲渡所得税(税務署へ):
    • 売却して利益(譲渡所得)が出た場合のみ発生。
    • 重要: マイホームの売却の場合、「3,000万円の特別控除」が使えることが多く、利益が3,000万円以下なら課税されないケースがほとんどです。

(B) 購入時にかかる諸経費

(目安:物件価格の6%~9%程度)

  • 仲介手数料(不動産会社へ): (購入価格 × 3% + 6万円)+ 消費税 が上限(中古物件の場合)。
  • 印紙税(売買契約書、ローン契約書に貼付): 数万円。
  • 登記費用(登録免許税 + 司法書士報酬):
    • 所有権移転登記(土地・建物の名義変更)
    • 抵当権設定登記(新規ローンの設定)
  • ローン事務手数料・保証料(金融機関へ): 金融機関やプランにより様々(数十万円になることも)。
  • 不動産取得税: 購入後、半年~1年後に都道府県から請求が来ます(軽減措置あり)。
  • 固定資産税・都市計画税の清算金: 引渡し日を境に日割りで精算します。
  • 火災保険料・地震保険料: ローン期間中に必須となります。
  • その他: 引越し費用、家具・家電購入費など。

住み替え成功の鍵

住み替えは、売却と購入のタイミング、そして資金計画が複雑に絡み合う高度な不動産取引です。成功の鍵は以下の点にあります。

  • 正確な資金計画: まず「いくらで売れそうか」を把握するため、複数の不動産会社に査定を依頼し、現実的な売却可能額を知ることがスタートです。
  • 無理のないスケジュール: 「売り先行」「買い先行」のメリット・デメリットを理解し、自分の状況(資金、家族構成)に合った方法を選択します。
  • 信頼できるパートナー選び: 売却と購入の両方に強く、住み替えローンやつなぎ融資の知識も豊富な不動産会社や担当者を見つけることが、最も重要です。

住み替えは専門的な知識が多岐にわたるため、早い段階で信頼できる不動産会社や住宅専門のファイナンシャルプランナーに相談し、ご自身のケースに最適なプランを立ててもらうことをお勧めします。

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長岡FP事務所
長岡FP事務所合同会社、代表社員・FP 長岡理知。 Ethical Fiduciary Planner(倫理的フィデューシャリープランナー) 住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。もうひとつの専門分野は生命保険。脳出血やガンなどの大病を患ったときの生活防衛や、老後資金の資産運用についてアドバイスしています。